会長 挨拶文
釧路市の発展の盛衰は釧路港の主要取扱貨物に象徴的に表れています。同時に釧路市の発展と釧路港は一体の関係にあります。
1899(明治32)年の釧路港の開港は、安田財閥による硫黄鉱山開発と硫黄の精錬、輸送のための蒸気機関の動力源として安田炭鉱(のちの太平洋炭鉱)が同時に開発され、最初は火薬の原料として「硫黄」を欧州向けに、さらに鉄道枕木として「原木」を北米と中国に輸出する目的ではじまりました。
1901(明治34)年、豊富な原木、漂白用の硫黄を原料に北海道最初の製紙パルプ工場 前田製紙合名会社(代表 元官僚 前田正名[1]のちの男爵)が釧路で「製紙パルプ」の生産をはじめ、それが現在の日本製紙釧路事業所の源流となっています。
さらに、「水産品」、「蝦夷鹿のつの」や「鹿革」の中国向け輸出が行われてきました。
戦後、アジア各国との交易を一度全て喪失しながらも、釧路港は日本最大の水揚げ漁港として発展し釧路の三大基幹産業といえば「水産」、「石炭」、「製紙パルプ」として広く知られることとなりました。
そしていまや北海道最大の穀物輸入拠点 釧路港(2020(令和2)年農水省データ 釧路港88.4万トン、苫小牧港74万トン)と、名実ともに北海道唯一の「国際バルク戦略港湾」として、新たな成長ステージへと進化しはじめています。
中国の諺に『お金持ちになりたければ、まずは道路を作らなければならない。(要想富 先修路)』というものがあります。
2024(令和6年)度中に、釧路は道東道(釧路西IC~釧路空港IC~阿寒IC)の開通によって、国際バルク戦略港湾(水深14m)、釧路空港、鉄道が一極に連結します。
これは国内でも珍しい、事実上の陸海空の物流の一大結節拠点が実現することを意味します。
2017(平成29)年から欧州~釧路~上海の北極海航路による巨大なバルク貨物船(中国COSCO社)の就航以来、日露関係の問題で一時停滞しつつも、欧州とアジアを結ぶ新たな航路として着実に継続しています。
アジアと欧米との航路で、アジアで最も最初に出会うファーストポートが釧路港になります。
2018(平成30)年 中国の国策『一帯一路』における北極政策で釧路港が『北の釧路 南のシンガポール』として標榜されるに至りました。
このような経済環境や地政学的見地からも、また中国との複雑な政府間事情を考慮しても、日中間の経済交流は必然であり、日中双方の民間窓口として釧路日中友好協会の存在意義は不可欠であると信じるものです。
「以民促官」民をもって官を促す。たとえ政府間に困難があっても民間の交流を盛んにして状況を変えてゆくという考えを第一に、釧路の経済成長の為にも当協会を運営して参りますので皆様方の変わらぬご支援ご支持を賜りますよう、引き続きお願いいたします。
前会長 挨拶文
釧路日中友好協会は日中友好7団体と呼ばれる日本と中国両国の公式友好団体のひとつ(公社)日本中国友好協会の地方組織にあたる。当協会の歴史は古く日中国交正常化以前の1952年釧路市に設置され2004年12月に解散した一代目組織があり、当時日本の国策に基づき発足したもので中国へ水産品、木材、硫黄を輸出していた。
現在の協会は2011年(社)釧路青年会議所と釧路商工会議所の一部協力で新たに発足した。
その背景は2011年釧路港が国際バルク戦略港湾として指定され東日本を代表する国際港湾に発展することが予測されたことがある。各国との外交チャンネルを構築し道内を代表する国際港湾都市として釧路の発展が道東、日本の産業発展に大きく貢献できると考慮したからである。
当時 草野満夫労災病院長(当協会初代会長)が釧路に着任したことが当協会発足の大きな始動に繋がった。
草野氏はガンのセンチネル治療における日本の権威であり、江沢民氏の母校たる名門の上海交通大学医学部客員教授であった。
この時と人との偶然が重なり当協会発足となったのである。
トピックス
11月10日 『北の釧路 南のシンガポール』講演録
11月10日 『北の釧路 南のシンガポール』講演録
講師 福山秀夫
1.コンテナ物流が世界を変えた。
1960年代以前の物流は、海運、陸運、空運がそれぞれ独立した形で行われ、貨物の積み替えも複雑で非効率的だった。1960年代以降、マルコムマクリーンによるコンテナ船の登場とISO規格の統一によって、陸海空運が連携する複合一貫輸送が発展した。これにより貨物の輸送効率が飛躍的に向上し、グローバルな物流が形成された。
1970年代以降は、アメリカ大陸やユーラシア大陸を横断するランドブリッジ輸送が進展し、陸路と海路を結ぶ新しい国際輸送ルートが誕生した。これらの動きは、21世紀における国際供給ネットワーク(グローバルサプライチェーン)の基礎となった。
2.中国の国策『一帯一路』とは世界物流戦略(港湾、鉄道、陸海空の一体化)である。
2013年、中国の習近平国家主席が提唱した一帯一路構想は、陸上のシルクロード経済ベルトと海上の21世紀海上シルクロードから構成される。前者は中国・中央アジアから欧州へと続く鉄道ネットワーク、後者は東アジアからアフリカ、欧州を結ぶ海運ルートである。狙いは、インフラ整備、投資、貿易、金融、人的交流を通じた対外経済関係の拡大と、国内地域経済の均衡発展であった。
この構想には65か国以上が参加し、世界人口の63%、経済規模の29%を占める広域経済圏を形成している。中国は一帯一路を通じて、ユーラシア・ランドブリッジを中心とした新たな国際輸送体系を構築し、自国の経済発展と地域連携を進めた。
2001年WTO加盟以降、中国は市場経済化に対応するため、港湾、鉄道、海運を連携させた経済発展戦略を展開した。鉄道部は2003年以降、「SEA&RAIL輸送(海鉄連運)」を掲げ、港湾と鉄道の接続強化を進めた。さらに、鉄道の現代化として定時性制の確保、ドアtoドアサービス体制の構築、安全性確保、インフラ整備を推進。2006年以降は全国に18か所のコンテナセンター駅を設置し、国内交通と国際交通の双循環の一体化を推進し、国内外の物流を結ぶネットワークを構築形成した。
輸送ルートとしては、連雲港〜阿拉山口、ホルゴス、カザフスタン、天津港~二連浩特(アルレンホト)、満洲里〜モンゴル、大連港〜満洲里ルートなど、3つの三大海鉄連運ルート大陸鉄道がを整備された。1990年代からはシベリア鉄道を利用したユーラシア・ランドブリッジ輸送が活発化し、2011年にはこのランドブリッジが、中国と欧州を結ぶ中欧班列として衣替えして開通した。重慶〜デュイスブルク(ドイツ)間を約18日で結び、PCや家電などの高付加価値製品を運ぶルートとして定着した。
2013年以降、中国は重慶だけでなく、成都や西安など18か所の鉄道コンテナセンター駅など内陸駅から出発する中欧班列を軸に、欧州各地との物流網を拡充。これにより中欧班列(ユーラシア・ランドブリッジ)が実質的に一帯一路構想の中核を担うこととなった。特にコロナ禍以降、海運の混乱を補う形で鉄道輸送の重要性が増し、陸上輸送の安定性が再評価された。現在では、鉄道、港湾、海運の総合的なネットワーク構築が進み、中国は「グローバル・サプライチェーンのハブ国家」として位置づけられている。
3.世界物流を握る国が世界の覇権国になる。
2000年代以降、中国は「港湾・海運・鉄道の一体的現代化」を国家戦略として推進した。背景にはWTO加盟(2001年)による市場開放と国際競争力強化の必要性があった。特に「SEA&RAIL政策」に基づき、港湾と鉄道を結ぶ複合輸送体制の整備が進められた。これにより、陸上輸送(鉄道輸送ランドブリッジ)と海上輸送(コンテナ船輸送シーレーン)を統合する形で、物流ネットワークの高度化が図られた。
2019年に交通運輸部が発表した世界一流港湾建設の指導意見では、6分野19項目におよぶ発展目標が設定された。主な柱は、①港湾総合サービスの高度化、②グリーン港湾建設、③スマート港湾建設、④開放と融合の推進、⑤安全強化、⑥港湾管理システムの近代化である。特にAIや自動化技術によるスマート化や、再生可能エネルギーの導入、廃棄物削減など、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の連携両立が重視された。この指導意見では、2025年までに世界トップレベルの港湾サービスを実現し、2050年には完全なグローバル標準港湾を構築することを目標としている。これにより中国は、港湾機能を単なる物流拠点から都市、産業、金融が融合する総合的ハブ機能として発展させている。
4.いまや世界物流は中国・アジアに集約化した。
現代化政策の成果として、中国の港湾は世界のコンテナ取扱量ランキングで圧倒的な存在感を示す。2024年の上位10港のうち上海、寧波舟山、深圳、広州、青島、天津など7港が中国に集中しており、上海港は連続して世界首位を維持している。これらの発展は、①港湾整備と高速輸送路網の拡張、②鉄道や内陸輸送網との連携、③輸出入貿易の拡大によるものであり、中国が世界物流の中心的地位を確立したことを示す。
ユーラシア・ランドブリッジ構想は1992年に始まり、西部大開発政策の一環として発展した。鉄道コンテナセンター駅を軸に、海港と内陸都市を結ぶ無水港を整備し、地域企業への物流サービスを提供。これにより内陸部の輸出入活動が活性化し、税関や保税区などのインフラも整備された。2012年には重慶、成都、蘭州などでランドブリッジ拠点プロジェクトが進行し、欧州への鉄道輸送を担うプラットフォーム体制が確立した。
中欧班列は2011年に運行を開始し、当初わずか17便、1,000TEUから、2024年には19,000便、207万TEUにまで急成長した。これは中国西部と欧州を結ぶ新たな国際サプライチェーンの確立を意味する。コロナ禍で海上輸送が停滞する中、陸上輸送の安定性が再評価され、中欧班列は東アジアと欧州を結ぶ巨大な陸上物流ネットワークとして機能している。
西部陸海新通道は、重慶を起点に南方の広西チワン自治区、北部湾港へ連結し、南寧・欽州・シンガポールをハブとし、ASEAN諸国と結ぶ新ルートである。2025年までに港湾取扱量1,000万TEU、海鉄連携50万TEUを目標とし、陸海一体の物流ネットワークを構築する。また中越班列(中国-ベトナム)や中老班列(中国-ラオス)も整備が進み、タイ、マレーシア方面への接続が推進計画されている。これにより、一帯一路はユーラシアから東南アジアまで広がる巨大な国際複合輸送圏として拡大している。
5.アジアにとって「さよなら日本」、「你好 中国 & Hello USA」
2024年に開通した「ASEANエクスプレス」は、ASEAN諸国をマレーシア・タイ・ラオス・中国とを結ぶ国際鉄道貨物ルートであり、クアラルンプール近郊のKNICD(Kontena Nasional Inland Clearance Depot)というコンテナデポからラオス・中国内陸部までを接続する。これにより東南アジアの物流ネットワークは大きく変化し、中国・ASEANクロスボーダー輸送と中欧班列の連携・統一的運用による中欧班列を基軸とした東アジアのグローバル・サプライチェーンを生成しつつある。海運依存から陸上輸送を含む「多層的サプライチェーン」へと進化した。ASEAN諸国の鉄道接続が本格化することで、中国主導の一帯一路構想とASEAN経済共同体(AEC)の連携が、経済的一体化の方向へと深化している。つまり中欧班列と中国・ASEANクロスボーダー輸送ルートを結ぶ連携によって、東アジア域内内部から欧州までをつなぐ巨大な物流ネットワークが形成されつつある。ユーラシア大陸を横断する鉄道網は、中国西部から中央アジア、東欧、西欧まで連続的に機能し、これが「これは一帯一路の」陸上経済圏のネットワークの拡大で実質的な背骨となっている。特に一方で、ウクライナ戦争により、ロシア経由ルートのリスクを回避し、カスピ海経由の中央アジアルートの重要性が高まっている。
ウクライナ戦争以降、シベリア鉄道を利用する輸送は制約を受け、日本と欧州系企業は回避傾向にある。その代替としてのカスピ海経由の西通路ルートが注目され、中国国家鉄路集団や欧州物流企業や日系企業が新サービスを展開している。例えば日本企業のNX中国(日本通運)や欧州船社のマースクラインなどが開発を進め、陸上輸送の多様化が進んでいる。このように、地政学的リスクを背景に非脱ロシア依存型ルートが再構築編されつつある。
このような状況下で、中欧班列の輸送量は、便数で約19,000便、TEU数で約207万TEUとなり、中欧班列は、中欧班列、ASEAN鉄道を基盤とするネットワークの統合により、東アジア全体でグローバルサプライチェーンが再構築されている。陸海連携が進むことで、平常時にも活用すべき海上輸送ルートとの協調ルートへと成長しつつある。このような一帯一路に基づく港湾間競争と協調は、中国及びASEANの港湾の成長を促進し、日本の港湾(国際コンテナ戦略港湾)との間に圧倒的な大差がつき始めている。
6.たちおくれた日本
これによって日本における欧州航路や北米航路という基幹航路の一層の減少へとつながっている。
海上ルートに並ぶ第三の物流軸として存在しているが、一方でグローバル・サプライチェーンの新たな課題として、2025年以降の欧州の環境規制の強化・進展(EU ETS、Fuel EU Maritime Regulation)等による海運・港湾・鉄道の新たな対応の必要性が出てきており、グローバル・サプライチェーンにおけるグリーン・デジタル海運回廊での提携が課題となってきている。東アジアの諸港湾と日本の港湾の提携の必要性、重要性を増している。日本の港湾競争力との格差拡大や、環境規制への対応が課題である。今後はデジタル化やグリーン化による国際海陸複合輸送の高度化が求められる。
7.世界中で進む陸海空の物流の一体化と中国との物流一体化
東アジアの国際物流ネットワークには、今、2つの新しい多様化が起こりつつあると言える。1つ目は、中欧班列のユーラシアにおける位置づけの第3の選択肢的代替ルートの位置づけから、海上輸送と並走する海運と同等の輸送ルート位置づけへの持続可能な成長と、それと並ぶ西部陸海新通道、欽州港ハブ化、中越班列・中老班列の本格化による多様なルートの連携。さらには2025年以降の欧州の環境規制強化への対応のための連携が同時に進行する複雑な多様化と近年は西部陸海新通道を中心に、中国西部(重慶、成都)とASEANを直結する鉄道海運ルートが整備された。さらに中越班列(中国〜ベトナム)、中老班列(中国〜ラオス)などが順次開通している。これらはASEANエクスプレスと連携し、東南アジアと欧州を結ぶ一体的な物流網を構築している。2つ目に、中国・アセアンクロスボーダー輸送と一帯一路との連携による一帯一路のネットワーク全体の急速な拡大である。
さらに第3の多様化と呼ぶべき事態が発生した。
中国の南米への進出である。2024年11月、上海港の技術を活用したペルー・チャンカイ港を開港した。この再開発はCOSCOシッピングが主導し、年150万TEUの港湾取扱能力を目指すものであり、上海~チャンカイ港直行航路を2024年12月に開通させた。さらにチャンカイ港からブラジル・イリェウス港を結ぶ約5,000kmの南米横断鉄道の建設が合意された。これは中国南米間の貿易拡大、輸送コスト削減、物流時間短縮を狙うもので、完成すれば太平洋〜大西洋を横断する新たな世界物流軸グローバル・サプライチェーンとなる。これは、3つ目の新しい多様化と言える。パナマ運河を利用しない新しい物流ルート・貿易が誕生するかもしれない。
8.世界規模の大規模港湾はアジア各国の国際港湾が席巻~世界からみて日本は眼中にすらない
1980年から2024年にかけて世界の港湾のコンテナ取扱量は急増し、アジアの港が上位を独占するようになった。2024年の上位には上海、シンガポール、寧波舟山、深圳など中国・東南アジアの港が並び、シンガポール港の取扱量は4112万TEUで世界第2位。日本の港湾は東アジアに比べて競争力が低下している。取扱量は前年比5.4%増、トランシップ比率は86%(2021年)に達する。シンガポール港はPSAが運営し、商社・金融・仲裁など多様な海事クラスターを形成しており、単なる物流拠点を超えた「海洋国家の戦略的中枢」となっている。神戸港は1980年に世界4位だったが、2023年には72位まで後退した。
次に、世界のコンテナ貨物の荷動き量を見ると、総計約1億8500万TEUである。2000年~2024年の北米往航の日本発の国際コンテナの荷動き量は、調査対象の東アジア18か国全体の11%にすぎず、中国が53.3%、シンガポールは1.2%、マレーシアは3.3%、これらはトランシップに特化して70%を占める。ベトナムは0.4%、ASEANは15.8%となっている。中国の「世界の工場」という機能が際立っている。一方、2024年の荷動き量をみると、日本3.1%、中国は55.3%、シンガポール0.7%、ベトナムは13.1%、マレーシア2.1%、ASEAN25.1%である。日本の北米輸送のコンテナ貨物はこの25年で7.9%も下落し、日本の工場生産量が相対的に減少していることがわかる。中国はそれほど変わらず「世界の工場」を維持しており、シンガポールは0.5%、マレーシアは1.2%下落してはいるが、この2港はトランシップ港であり、トランシップ貨物が拡大していると言える。ASEANは9.3%増加したが。これはベトナムが2.7%増加していることが反映している。ベトナムは貿易港を有し2024年では工場立地の増加により生産量の拡大と港湾取扱荷動き量が急拡大をしていることを反映している。
9.『北の釧路 南のシンガポール』 国是 日本の夜明けは釧路港からはじまる。
北東アジアの玄関たる釧路港の国際ハブ港湾化は「北海道全体の産業再興と日本の国際物流戦略における軸になる。」
シンガポール港の港湾の運営をみると、全自動化や電動化が進んでおり、ゼロエミッション港湾を目指す政策を推進している。2022年にトゥアス新港が部分開業し、2027年までに既存ターミナルを統合。最終的に2040年代には年6,5000万TEUを処理できる総延長26㎞の世界最大級の港湾となる予定である。
また2023年にはASEAN首脳会議で、シンガポールと日本の国交省は、グリーン・デジタル海運回廊の協力覚書定を締結した。東京、横浜、名古屋、大阪、神戸港など日本主要港と連携し、低炭素燃料、港湾電化、スマート港湾運営、AI自動化やペーパーレス化を進めている。シンガポールはアジア港湾の中で最も早くデジタル化と脱炭素化を結びつけ、国際標準をリードしている点が特徴である。
釧路港の国際コンテナターミナルは、西港区第3ふ頭18号バースに位置し、水深12m、延長240m。ヤード面積3万200㎡、蔵置能力2,400TEUを備える。荷役機械はガントリークレーン1基とリーチスタッカー3基を有し、リーファプラグは50口設置されている。
国内航路では苫小牧、東京、仙台、名古屋などとRORO船による定期便が運航され、外航航路では釜山、金沢、仙台、苫小牧間を結ぶ南星海運高麗海運の便がある。現状では輸出入貨物量が限定的で、トランシップ港としての地位確立には至っていない。
釧路港が国際的なハブ港を目指すには、①背後地における産業クラスターとの連携、②トランシップ港化に向けたDX対応、③内陸輸送と海上輸送の接続強化が鍵となる。特にシンガポール港のような集貨再分配機能と海陸複合輸送の導入が重要である。
また、道東地域や北極海航路との連携を視野に、北海道東部の物流拠点としての優位性を活かす必要がある。内航RORO船やJR貨物との連携、釜山や大連など東アジア主要港との接続拡大が今後の課題である。
また、中国船の入港を検討することも貨物拡大の重要な手段となる。
釧路港は現在、バルク戦略港湾としてRORO船中心の内航が主体で、外貿航路は釜山便のみである。今後、国際競争力を高めるためには、コンテナ貨物への転換とハブ化が不可欠である。
釧路港と苫小牧港(釧路港の成長と裏腹に苫小牧港はコンテナ物流が大きく減少している)の一体運営を進め、内陸の農産物、畜産物をコンテナ化して輸出できる体制を整えることが重要だ。さらにJR貨物との連携で陸上輸送網を確立し、アジアや欧州とつながる北海道ランドブリッジ構想を進めるべきである。
釧路港は将来的にバースを5~6か所、ガントリークレーンを20基備え、5〜10kmの港湾拡張を目指す必要がある。
人手不足が進む中、シンガポールや中国のような全自動、ゼロエミッション港湾の実現を見据えて、機械化と省人化を同時に進めるべきだ。
国内から貨物を集めるRORO船の強化と、地域工場誘致による貨物増加策も欠かせない。
釧路港が輸出拠点として成長すれば、北海道全体の産業再興と日本の国際物流戦略における軸となり得る。
10.北極海航路 必須!我が国の国策大転換
北極海航路は、中国が氷上シルクロードと呼んで一帯一路構想の重要な要素としてみている。スエズ経由に比べ航行日数を約半減させることができる。Cco2排出量も約50%削減された。北極海航路は他航路と比較すると、その優位性は明らかであるが、北極海航路の利用は、マースク、MSC、CMAなどは環境配慮のため利用をするか未定だ。
ONEやシンガポールのPSAも同様である。
一方で、中国や韓国は積極的だ。
北極圏の気候変動リスクや氷結期の航行制限、政治的リスクなど課題も多い。
現在、中国はロシアと協力して北極圏インフラ整備を進めている。日本はどう動くべきか。官民挙げての議論が必要である。
講師 福山秀夫
1955年生まれ。熊本県出身。80年九州大学法学部卒。2004〜08年日本郵船北京事務所代表。05年北京駐在中に中国物流研究会に参加。中国物流の研究を本格的に開始した。20年8月日本郵船を定年退職。9月より、(公財)日本海事センター企画研究部客員研究員。日本海事センターでは、東アジアやユーラシアの海運・港湾・鉄道を中心とした国際複合輸送、グローバル・サプライチェーンの研究を主に行っている。これまで、中国物流研究会で、13年2度、18年、19年、24年、25年の6回の調査を実施し、調査の成果をメディアや研究団体や学会等で多数発表。2024年1月に『東アジアの港湾と貿易(男澤智治・合田浩之編著)』(成山堂書店)を共同執筆。10月には日本海運経済学会で論文「ポストコロナとウクライナ戦後の東アジア国際物流ネットワークの進展~国際複合一貫輸送の視点から~」が、国際交流賞を受賞した。
日本海運経済学会、日本港湾経済学会、日本物流学会、日本貿易学会、国際アジア共同体学会等5つの学会の会員で、現在、日本港湾経済学会理事、国際アジア共同体学会直属(一社)一帯一路日本研究センターシニアフェロー(上級研究員)、中国物流研究会代表幹事を務めている。
11月10日 『北の釧路 南のシンガポール』公開講演会の様子
11月10日 『北の釧路 南のシンガポール』公開講演会の様子
◎釧路港整備にあたってのおおまかな提案内容。
1.バルク貨物からコンテナ港湾化が、発展成長の重要な要素。
2.鉄道貨物とコンテナ貨物との融合、港湾荷役のDX化、無人化、自動化による一体的な整備が不可欠。釧路のコンテナ貨物駅はコンテナ埠頭に併設し、規模は延長2キロ、幅を700mから800mとする。第二青函トンネルを整備し、全国から釧路への鉄道貨物輸送体制の構築。(C&R 海上コンテナと鉄道貨物との一体化)
3.コンテナ埠頭は1ブロック全長5キロの直線化が目安である。(全国 釧路以外でこれら整備できる地形はない。)規模の拡大とともに5キロ単位で延長して整備を推奨。
4.釧路港はトランシップ港として発展成長させるのを推奨。(内航、鉄道貨物、道東自動車道、道東縦貫道、釧路空港による一大物流拠点化)
◎福山氏講演録から(釧路港に言及)
釧路港が国際的なハブ港を目指すには、
①背後地における産業クラスターとの連携、
②トランシップ港化に向けたDX対応、
③内陸輸送と海上輸送の接続強化が鍵となる。
特にシンガポール港のような集貨再分配機能と海陸複合輸送の導入が重要である。
また、道東地域や北極海航路との連携を視野に、北海道東部の物流拠点としての優位性を活かす必要がある。内航RORO船やJR貨物との連携、釜山や大連など東アジア主要港との接続拡大が今後の課題である。
また、中国船の入港を検討することも貨物拡大の重要な手段となる。
釧路港は現在、バルク戦略港湾としてRORO船中心の内航が主体で、外貿航路は釜山便のみである。今後、国際競争力を高めるためには、
コンテナ貨物への転換とハブ化が不可欠。
釧路港と苫小牧港の一体運営を進め、内陸の農産物、畜産物をコンテナ化して輸出できる体制を整えることが重要。さらにJR貨物との連携で陸上輸送網を確立し、アジアや欧州とつながる北海道ランドブリッジ構想を進めるべき
釧路港は将来的にバースを5~6か所、ガントリークレーンを20基備え、5〜10kmの港湾拡張を目指す必要がある。
人手不足が進む中、シンガポールや中国のような全自動、ゼロエミッション港湾の実現を見据えて、機械化と省人化を同時に進めるべき。
国内から貨物を集めるRORO船の強化と、地域工場誘致による貨物増加策も欠かせない。
釧路港が輸出拠点として成長すれば、北海道全体の産業再興と日本の国際物流戦略における軸となり得る。
北極海航路は、中国が氷上シルクロードと呼んで一帯一路構想の重要な要素としてみている。スエズ経由に比べ航行日数を約半減させることができる。Cco2排出量も約50%削減された。北極海航路は他航路と比較すると、その優位性は明らかであるが、
北極海航路の利用は、マースク、MSC、CMAなどは環境配慮のため利用をするか未定。
ONEやシンガポールのPSAも同様である。
一方で、中国や韓国は積極的。
北極圏の気候変動リスクや氷結期の航行制限、政治的リスクなど課題も多い。
現在、中国はロシアと協力して北極圏インフラ整備を進めている。日本はどう動くべきか。官民挙げての議論が必要である。
→補足 釧路港の沖は釧路海底谷(全長150km 浅いところでも水深80m~急激に5,000mに落ち込む)と呼ばれる国内有数の深い溝が釧路川河口から千島海溝まで続いている。これは遠浅の砂浜海岸の苫小牧沖と異なり大水深港湾の建設に極めて有利な条件をもつ。
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